この記事のポイント

  • 本番で何が起きるかを少しずつ知っておくこと
  • おじぎ → 演奏 → おじぎ
  • ここなら途中から始め直せる
  • 失敗が起きても戻れる準備
  • 舞台へ立つプロセスそのもの

発表会が近づくと「出たくない」と言う子もいる

発表会へ向けて練習していた子どもが、本番が近づくにつれて、
「出たくない」
「間違えたらどうしよう」
と言い始めることがあります。
このとき、
「もっと練習すれば大丈夫」
と練習量だけを増やしても、緊張そのものがなくなるとは限りません。
私たちはむしろ、
本番で何が起きるかを少しずつ知っておくこと
を大切にしています。

演奏だけでなく「おじぎ」から練習する

レッスンでは、本番前になると演奏だけではなく、
おじぎ → 演奏 → おじぎ
という一連の流れを練習することがあります。
レッスンの最後に、
立つ。
おじぎする。
座る。
弾く。
立つ。
もう一度おじぎする。
そこまでを一つの動作として繰り返します。
本番当日に初めて経験する動作を減らしておくためです。

「途中で止まったら終わり」にしない

子どもが特に怖がるのは、
「途中で分からなくなったらどうしよう」
ということです。
そこで曲の中に、
ここなら途中から始め直せる
という場所を何か所か作っておきます。
私はこれを、いわば「レスキューポイント」として使います。
最初から最後まで一度も止まらないことだけを成功条件にすると、一度のミスが非常に大きな出来事になります。
でも、
「ここまで飛んで再開してもいい」
と分かっていれば、失敗した後にも演奏を続けられます。

本番対策は「間違えない練習」だけではない

発表会の準備というと、
曲を完璧にすること
ばかりに目が向きます。
しかし、本番では練習と違うことが起こります。
人が見ている。
普段と違う場所にいる。
おじぎをする。
椅子の高さが違う。
一度失敗しても弾き続けなければならない。
だから、
失敗が起きても戻れる準備
まで含めて本番練習だと考えています。

保護者には「失敗しないで」と言わないでほしい

家庭で保護者の方にお願いしているのは、
「失敗しないようにね」
「ちゃんと弾いてね」
という声かけを減らすことです。
励ますつもりでも、子どもには、
「失敗してはいけない」
というメッセージとして伝わることがあります。
代わりに、
「衣装を着るの楽しみだね」
「舞台で一音鳴らせたら、それだけでもすごいね」
と、
舞台へ立つプロセスそのもの
を肯定してもらいます。

成功の基準を「完璧な演奏」にしない

発表会の価値は、
ミスなく最後まで弾くことだけではありません。
人前へ出る。
おじぎをする。
ピアノの前へ座る。
一音目を出す。
途中で止まっても戻る。
最後まで舞台にいる。
それもすべて経験です。
だから、私は子どもに、
一度も間違えなかったか
だけで発表会を評価してほしくありません。

緊張しない子にする必要はない

本番で緊張すること自体は、悪いことではありません。
大切なのは、
「緊張していても、次に何をするか分かっている」
状態を作ることです。
そのために、
本番動作を繰り返す。
途中復帰できる場所を作る。
家庭では失敗への圧力を減らす。
こうした準備を重ねます。
香住ヶ丘ミュージックスクールでは、発表会への参加そのものを目的にするのではなく、お子様の性格や準備状況に合わせて本番への関わり方を考えています。

「緊張しないで」は、励ましにならないこともあります

発表会の前、子どもが緊張していると、つい言いたくなる言葉があります。

「大丈夫だよ」
「緊張しないで」
「楽しんでおいで」

もちろん、どれも励ましたくて出てくる言葉です。

ただ、本人がすでに強く緊張しているときには、少し逆効果になることがあります。

緊張していること自体を悪いことにしない

「緊張しないで」と言われると、子どもによっては「緊張している自分はダメなんだ」と受け取ってしまいます。

発表会で緊張するのは自然なことです。ですから、まずは

「ドキドキするよね。ここまで練習してきたから、緊張するのは普通だよ」

くらいでいいと思います。

緊張を消すことより、緊張したままでも舞台へ出られる状態を作るほうが大切です。

「楽しんで」も、その子の状態によっては負担になります

すでに舞台袖で逃げ出したいほど緊張している子にとって、「楽しんでおいで」は意外と難しい注文です。

楽しむ余裕がないのに、「楽しめない自分はダメなのかな」と感じる子もいます。

そんなときは、目標を低くしてしまって構いません。

「間違えてもいいからね。行ってらっしゃい」

それだけで十分なこともあります。

直前の細かい注意は増やしすぎない

本番前になると、親のほうも不安になります。

「あそこ間違えないでね」
「背筋を伸ばして」
「最初の音を忘れないで」

と確認したくなりますが、直前に情報を増やすほど、子どもの頭の中がいっぱいになることがあります。

本番直前は技術を直す時間ではありません。必要なら先生に任せて、家庭では安心して舞台へ向かえる雰囲気を作るほうが役に立ちます。

KMSでは、進行より子どもの状態を優先することがあります

発表会では、予定どおり進行することより、その子がどうすれば舞台に立てるかを優先することがあります。

過去には、舞台に出たあと緊張で10分ほど動けなくなった子がいました。急かさず待っていると、最後は本人が自分から演奏を始め、最後まで弾き切りました。

別の発表会では、一度舞台へ出たものの弾き始められなかった子の順番をいったん後ろへ回したこともあります。その後、もう一度出てもらうと演奏することができました。

発表会の運営側には時間があります。でも、子どもにとってはその一回が大きな経験です。

「予定どおり弾けること」だけを成功にせず、その子の特性に合わせて舞台との向き合い方を調整する。

KMSでは、そういう運営も必要だと考えています。

発表会前の緊張についてよくある質問

本番で固まってしまったら失敗ですか?

失敗とは考えていません。舞台に出られたこと自体が大きな一歩の場合もあります。状況によっては少し待ったり、順番を後ろへ回したりすることで演奏できることもあります。

発表会直前、親は何と言えばいいですか?

無理に緊張を消そうとせず、「緊張するよね」「間違えても大丈夫だよ」くらいで十分です。直前に演奏上の注意を増やしすぎないことも大切です。

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